"ゆりかごの歌"を聴きながら

何年、何十年経ってから、何をしていたか見返すための記録

(読書記録)怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ

ボクシングの井上尚弥選手と戦った選手たちのエピソードがまとめられたもの。

怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ | 森合 正範 |本 | 通販 | Amazon

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「みんな、井上と闘うなら今しかない。来年、再来年になったらもっと化け物になる」
2013年4月、井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹はそう叫んだ。
それからわずか1年半、世界王座を計27度防衛し続けてきたアルゼンチンの英雄オマール・ナルバエスは、プロアマ通じて150戦目で初めてダウンを喫し2ラウンドで敗れた。「井上と私の間に大きな差を感じたんだよ……」。
2016年、井上戦を決意した元世界王者・河野公平の妻は「井上君だけはやめて!」と夫に懇願した。
WBSS決勝でフルラウンドの死闘の末に敗れたドネアは「次は勝てる」と言って臨んだ3年後の再戦で、2ラウンドKOされて散った。
バンタム級スーパーバンタム級で2階級4団体統一を果たし、東京ドームでルイス・ネリ戦を倒した「モンスター」の歩みを、拳を交えたボクサーたちが自らの人生を振り返りながら語る。第34回ミズノスポーツライター賞最優秀賞に輝いたスポーツノンフィクション。

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特にボクシングに詳しいわけではないが、ちょっとしたきっかけで読んでみた。

各章で語る井上選手の対戦相手は、正直一人も知らない方だったし、井上選手の試合もしっかりと観たことはないが、対戦相手(敗者)が語る構成は面白いなと思った。本全体として、井上選手自身が語る箇所は非常に限定的な印象。

そして、必ずしもスポットライトが当たらない対戦相手にも人生や家族があり、色々な思いがあるのだなと、ボクシング素人ながら感じた。子供の頃は勝者ばかり関心を持っていたが、大人になると敗者の気持ちを知ることも感慨深い。

おそらくボクシングに明るいと更に楽しめるのだろうが、特にボクシングに詳しくなくても面白い本だと思った。

(読書記録)住みたいまちランキングの罠

住みたいまちランキングを切り口に、住みやすい街について考える新書。

Amazon.co.jp: 住みたいまちランキングの罠 (光文社新書) : 大原 瞠: 本

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今、日本の多くの市区町村では、「住みやすいまち」を追い求めた結果、自己責任や受益者負担の原則が脇に置かれ、適切な受益者負担がなされないまま、表から見えないかたちで財政上のダメージが高まってきている。本書は、そんな現状を憂えた関係者の声なき声をもとに、住みやすいまちをめぐるさまざまな誤解や“不都合な真実”に光を当てる。

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住みたいまちランキングとしては、吉祥寺や横浜などが上位に位置するが、確かに何をもって住みやすいかということは、イマイチ明確ではない(明確にイメージできない)。なんとなく、都心へのアクセスは便利、かつ、閑静な住宅街があり、また、公園などもある、などだろう。

この本では、何をもって住みやすいかという切り口で解説がなされている。2018年の本であるため、不動産価格などの考察は若干現在と異なる部分はあるものの、例えば、病院や区の施設、図書館が近いと本当によいのか、便利な街とは何か、サービスを負担するのは誰なのかなどを改めて考える良いきっかけになった。

そもそも、自分にとって「住みやすい」を考えるべきで、他人目線は参考程度というのが大切なのだろう。

(読書記録)鎌倉駅徒歩8分、空室あり

鎌倉のシェアハウスに住む女性たちを舞台にした小説。

Amazon.co.jp: 鎌倉駅徒歩8分、空室あり : 越智 月子: 本

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誰かと生活することは、めんどくさいけどあたたかい。
鎌倉駅から徒歩8分。木々と小鳥に囲まれたシェアハウスには、今日もカレーとコーヒーの香りがいっぱい。
まだ空室アリ〼。


男手一つで育ててくれた父が死んで、鎌倉のカフェを引き継いだ香良。ある日離婚した親友が押しかけてきて、いつの間にかシェアハウスをはじめることに! 次々やって来る入居者たちは、みんなちょっとワケあり。慣れない他人との共同生活に、イラっとしたり文句を言ったりもするけれど……。家族だから言えない、家族だから甘えられない。そんなひとりぼっちになった住人たちが見つけた新しい形のきずなに、あたたかい気持ちになる1冊。

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鎌倉のカフェが舞台になっており、コーヒーや食事の描写が非常においしそうで、鎌倉に行きたくなる。

物語の内容としては、シャアハウスに住む女性たちは、いわゆる中高年層。各々様々な悩みを持っており、それをもとに物語が進んでいく。個人的には、登場人物の年齢層のわりに、若干発言や行動などが軽い点が気になったのと、登場人物の悩みや考え方に共感しにくいところもあったという感想を持った。

 

(読書記録)ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実

ビジュアルで分かりやすく日本の地理などを解説した本。

Amazon.co.jp: ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実 電子書籍: にゃんこそば, 宮路 秀作: Kindleストア

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●ビジュアル化すると地理はもっと楽しくなる

子どものころや学生のころ、社会科や地歴公民の資料集が好きだった人は多いのではないでしょうか。あるいは、都道府県ランキングや「○○県のひみつ」のような、地理に関する雑学ネタならいくらでもお代わりできるとか、なんとなく地図を眺めるだけでうれしくなる――といったライトな地理ファンもたくさんいることでしょう。

筆者は、地理や自然に関するデータをわかりやすく「可視化」することをテーマに活動し、X(旧Twitter)や講演会を通じて、さまざまな作品を世に送り出しています。データ可視化とは、複雑なデータをひと目でわかるように表現することを指していて、一般的に地図やグラフ、チャート、アニメーションなどの表現手法が使われます。

数値や文字の羅列であるデータをビジュアル化することによって物事の全体像を理解できるようになりますし、先入観にとらわれずに物事の本質を認識できるようになるため、ビジネスにおける意思決定の場や、研究における分析や考察の場でよく使われてきました。また近年では、新聞などの報道でも、データをわかりやすく視覚化した記事が増えてきました。

書店の地理コーナーに行くと、作者が主役の本(エッセイや紀行文)や地図が主役の本(ビジュアル解説書)、地域が主役の本(ご当地あるあるネタ)が目に飛び込んできます。しかし「データが主役」×「ビジュアルが多くて読みやすい本」はあまり多くなかったことが、本書を執筆した動機です。あまり専門的にならず、かといって雑学に偏ることなく、ライトな地理ファンから地理学を学ぶ学生、さらには行政や企業の方まで幅広い読者を想定して書きましたので、気軽に手に取っていただければと思います。

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第1章がユニクロやスタバなどの有名チェーンが出店している駅を解説しており、非常に身近、かつ、分かりやすく解説していると感じた。眺めているだけで面白いなと。

様々なテーマが記載されており、この場で一つ一つに触れることは難しいが、総じて東京とそれ以外の地域で、見えている世界や常識が結構違うということを改めて感じた。世帯年収や鉄道の利用など、様々な違いがある中で、それをデータで分かりやすく示されており、個人的に少し解像度が高まった。

年月が経過するごとに傾向などは変わるだろうが、本書は2023年末に出版された本であり、新鮮な情報も多く有意義な本だと感じた。

(読書記録)サイレント・トーキョー: And so this is Xmas

東京を舞台に爆弾テロが発生するクライムサスペンス。

Amazon.co.jp: サイレント・トーキョー: And so this is Xmas (河出文庫) : 秦建日子: 本

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「これは戦争だ」――恵比寿、渋谷で起きる連続爆弾テロ。第3のテロを予告し首相とのテレビ生対談を要求する犯人の目的は?

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様々な脚本などを手掛けている著者の作品として、展開はスピーディー、かつ、迫力があるものであると感じた。ほぼ一気読みのような形であった。

爆弾テロなどのサスペンスにありがちであるが、結末が難しいところで、個人的には、本作もエンディングとしては少し疑問を持ったところではある。

 

(読書記録)校庭の迷える大人たち

学校を舞台にした5つの短編小説。

Amazon.co.jp: 校庭の迷える大人たち : 大石 大: 本

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小六の息子の授業参観で母校を訪れた幹太は、自分がこの小学校に転校してきた時の奇妙な出来事を思い出す。(「シェルター」)担任する児童の誰かが手のかかる児童ということで、「危険業務手当」をもらっている真奈だが――(「危険業務手当」)学校に集う大人たちに起きた、5つの奇談。

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いずれも怪談ではないが、都市伝説的なものがベースとなっている。比較的テンポよく話が進んでいくので、読み進めやすい。

主人公やその周囲にモヤモヤしたエピソードがある中で、結果として前向きな形のエンディングになるところが印象的であった。

(読書記録)うんちの行方

様々な場所におけるトイレの汚水の処理、これまでの歴史等をまとめた新書。

Amazon.co.jp: うんちの行方(新潮新書) 電子書籍: 神舘和典, 西川清史: Kindleストア

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どう浄化? 鉄道や船では? 5分で飲用水に? 徹底取材で、驚きと感動の奥深い世界へご案内!
流した後はどこへ? どう浄化される? そのために誰が、どんな苦労を? 鉄道や船はどう処理? もしマンション全戸で一斉に流したら? あらゆる疑問を徹底取材。下水を嗅ぎ、汚水処理場に潜り、「5分でウンチが飲用水になる」最新技術に触れ、トイレメーカーを質問攻めに。さらに元作業員が語った貴重な証言とは――。フタを開ければ、思わず唸る驚きと素朴な感動がてんこ盛り、奥深い世界へご案内!

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現在のトイレの仕組みや過去の歴史、経緯等がまとめられているが、何か複雑な解説がされているものではなく、読みやすい本である。子供の頃に下水処理の流れを勉強したり、どこかに社会科見学に行ったりしたような気もするが、大人になって見てみると、また、違ったような感想を受ける。

トイレに限らず、自分の家の排水がどのようになっているかは、身近であるがあまり承知していないところで、改めて認識するには良い一冊だと感じたし、ありきたりではあるが、昔は恵まれた環境ではなかった中で現代の仕組みがあるのだと感じた。