"ゆりかごの歌"を聴きながら

何年、何十年経ってから、何をしていたか見返すための記録

(読書記録)六人の嘘つきな大学生

IT企業の最終選考に残った6人の就活性が中心となるミステリー。

六人の嘘つきな大学生 | 浅倉 秋成 |本 | 通販 | Amazon

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成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

『教室が、ひとりになるまで』でミステリ界の話題をさらった浅倉秋成が仕掛ける、究極の心理戦。

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6人の中から話し合いで1人を決める、というのは、現実の就活の感覚では「?」であるが、そこは小説の世界。

各学生の告発文が明らかになるが、一部には「IT企業なら人事部もネットで検索しては分かるのでは。」という気もする。

前半は就活のディスカッション、後半は20代後半になって真犯人を探すという構成。そもそも就活にここまで力を入れられる学生もなかなか。

 

最終的な結末は予想できたものであったが、上記を割り引いても面白いと感じた(ミステリーなのか?、という点はあった)。

そして、就活の考え方、特に人事部のセリフは的を得ていると思う。「確実にいい人を選ぶということが、まったくもって不可能」。人事も人間であり、不完全。この世に絶対はなく、体調や外的要因でも学生を見る目線は変わってしまう。日本の就活は儀式的。

 

人生を決めるにもかかわらず、まさに「運」の要素はある。

面接官を経験した自分としても、ここを意識しすぎてしまうと選考ができない、過度なプレッシャーになってしまうと感じる。

小説で記述されている就活の目線などは共感できるものがあるが、あえて付言すると、面接などを通じて「明らかに自社に合わない人を選別する」ことは一定程度可能と感じる。当然、「自社にとって一番の人材」を見抜くことは、非常に困難であるが、そのような人材に内定を出しても、果たして入社してくれるかという問題がある。そのような悩み事や課題、また儀式的云々といった日本の就活の問題点はあるが、ある程度は致し方ない or 理にかなっていると今になって感じている。

(とはいえ、自分が学生の時は「面接程度で自分の良さが何が分かるのか」、「短い面接で何を判断できるのか」など、「就活はヒドイ」と考えていたので、小説の学生の気持ちも十二分に理解はできるのだが)

六人の嘘つきな大学生