"ゆりかごの歌"を聴きながら

何年、何十年経ってから、何をしていたか見返すための記録

(読書記録)22年目の告白-私が殺人犯です-

殺人事件の犯人の告白がベースとして進められるミステリー。

Amazon.co.jp: 22年目の告白-私が殺人犯です- (講談社文庫) : 浜口 倫太郎: 本

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書籍編集者・川北未南子の前に突如現れた美しい青年・曾根崎雅人。彼から預かった原稿は、巧みな文章で綴られ、彼女を魅了した。しかし、そこに書かれていたのは、22年前に実際に起こった連続絞殺事件、その犯人による告白だったのだ。『私が殺人犯です』と題された本はたちまちベストセラーとなり、曾根崎は熱狂を煽るかのように挑発行為を続ける。社会の禁忌に挑む小説版『22年目の告白』。


驚愕の先の涙、涙! 小説というもう一つの衝撃。
書籍編集者・川北未南子は苦悩していた。突如現れた美しい青年・曾根崎雅人から預かった原稿は、巧みな文章で綴られ、彼女を魅了した。しかし、そこに書かれていたのは、22年前の、すでに時効が成立した連続絞殺事件、その犯人による告白だったのだ。はたして、この本は出版されるべきなのか。だが――わたしはもう悪魔の虜になっていた……。
出版された『私が殺人犯です』は、たちまちベストセラーとなり、曾根崎は熱狂を煽るかのように挑発行為を続ける。犯人逮捕を果たせなかった刑事の無念。そして、被害者遺族たちのやるせない思い――。社会の禁忌に挑む小説版『22年目の告白』が登場。

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映画を小説に書き下ろした作品。読み終わった後に知ったが、読んでいる途中からも何となくそんな感じはしたし、実写の方が映えるストーリーかもしれない。映画の主演が藤原竜也氏というのは、マッチしそうである(観ていないが)。

 

個人的には前半から中盤まではかなり面白くて一気に読んだが、どうしても結末を設ける必要があるとは思うが、ラストは”うーん”という感じだった。筆者の描写のタッチなどは自分好みではあった。

作品自体はフィクションであるが、実際にこのようなことが現実に発生した場合、どのようになるのだろうか。一般に凶悪犯にも熱狂的なファンがいる、というのは最近の風潮ではあるのは確か。ただ、この小説のように告白が話題になるのかどうか。

(読書記録)モフモフはなぜ可愛いのか:動物行動学でヒトを解き明かす

動物行動学について質疑応答形式でまとめられた新書。

Amazon.co.jp: モフモフはなぜ可愛いのか:動物行動学でヒトを解き明かす (新潮新書 1032) : 小林 朋道: 本

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ヒトはなぜモフモフしたものを可愛いと感じるのか? 血のつながりと自爆テロとの関連は?――長年、様々な野生動物の行動と習性を研究してきた著者が、SNS上で「ヒトという動物」についての疑問を聞いたところ、硬軟とりまぜて質問が殺到。本書では、その中から厳選した13の問いに対して、動物行動学の知見をもとに鮮やかに回答する。ホモサピエンスに特異的な行動の数々から、人間の本性を解き明かす。

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タイトルの”モフモフ”については、後半の一つの章で回答されている。中身を読まずに手に取ったので、最初はタイトルと中身に若干戸惑った。そのため、本書全てで”モフモフ”が触れられているわけではないが、その他の問も面白い。

全体的に「自然界で生きていくため、有利に働くため」という考察が多い。これは当然であろう。そして、明確な回答ではなく「・・・と考えられる」とされているところも多く、歯切れが悪いと言われては仕方ないが、まだ正確には分かっていないことも多いと思うと、未知の領域も残されていて面白いと思う。

個人的に良く感じる、また、確かに言われてみれば・・・という話が多く、面白かった。あきらめではないが、ある意味、人間は動物としてこうなんだな、と思うことにより、気持ちがラクになるようにも思う。

(読書記録)ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人

東野圭吾氏作の長編小説。

Amazon.co.jp: ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 : 東野 圭吾: 本

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謎を解くためなら、手段を選ばない。コロナの時代に、とんでもないヒーローがあらわれた!

名もなき町。ほとんどの人が訪れたこともなく、訪れようともしない町。けれど、この町は寂れてはいても観光地で、再び客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。多くの住民の期待を集めていた計画はしかし、世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。町は望みを絶たれてしまう。そんなタイミングで殺人事件が発生。犯人はもちろん、犯行の流れも謎だらけ。当然だが、警察は、被害者遺族にも関係者にも捜査過程を教えてくれない。いったい、何が起こったのか。「俺は自分の手で、警察より先に真相を突き止めたいと思っている」──。颯爽とあらわれた〝黒い魔術師〟が人を喰ったような知恵と仕掛けを駆使して、犯人と警察に挑む!
最新で普遍的。この男の小説は、ここまで凄くなる。東野圭吾、圧巻の離れ業。

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父親が殺害された娘と叔父が中心となり事件解決に導くといった物語。被害者は学校の教師で、その教え子たちが事件に絡んでくる。

ストーリー自体は面白いが、今回の作品の結末は個人的には予想できたものであった。

個人的には、学生自体は楽しかったものの、卒業後に当時の教師を頼ったりすることはないなと。そういう関係性を気付くような学生でもなかったが。

 

(読書記録)実践・哲学ディベート: 〈人生の選択〉を見極める

協議ディベートではなく、哲学的な見地から各論点についてディベートが行われる新書。

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「論理」を鍛え、「問題」と向き合う!

反出生主義に教育問題、ルッキズムからAI脅威、意思決定論まで。誰もが遭遇する人生の身近な事例を手掛かりに、「教授」と「学生たち」のディベート形式で、哲学的論点を浮かび上がらせる。NHKブックス『哲学ディベート』以降に登場した、新たな思想潮流や現代特有の課題を集中的に取り上げ、思考法とアプローチを同時に身につけることを目指す、画期的哲学入門!

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いくつかの論点について、各学生が発表・発言するが、この学生は架空の人物であり、学生の発言という形で論点出しが行われているという雰囲気である。

個人的にディベートは好きではない、より正確に言うとディベートを見ることは嫌いではないが、課題そのものへの自分の意見・考え方などが混じってしまい、公平に見ることができない。どうしても自分の意見などと賛同している方を支持したくなってしまう。

 

この本の「哲学ディベート」とは、相手を論破する、打ち負かすというものではなく、様々な考え方を提示するものであり、見方として勉強になった。

仕事やビジネスでは、どうしても論理的、エビデンス云々が求められることが多いが、現実の問題の多くは個人的な感情が重要である。

私の一考えでいえば、むしろ仕事以外のプライベートは、自分で決定する必要がある事項に満ち溢れ、更にそれは必ずしも論理的に決定されるものではないと思う。個々人の考え方は当然に哲学的なものが含まれるだろうし、他者の哲学的な視点というものも、自身の知見を広げる意味では有意義と感じた。

 

(読書記録)大絶滅は,また起きるのか?

岩波ジュニア新書として出版された一冊。

Amazon.co.jp: 大絶滅は,また起きるのか? (岩波ジュニア新書 953) : 高橋 瑞樹: 本

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毎日、最大一五〇種もの生きものたちが、地球上から姿を消している――いま「六度目の大絶滅が進行中」だと、科学者たちが警鐘を鳴らしています。過去五度起きた大絶滅とは? 日本のトキは絶滅したのか? 恐竜はいまも生きている? 生きものの絶滅とはどういうことか、なぜ問題なのか、さまざまな生きものを例に解説します。

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ジュニア新書の位置付けであるが、むしろ普段、環境などを意識していない大人が読んでも勉強になる(むしろそういう人向け)一冊だと思う。

環境問題は経済問題と密接に関係している点が難しいところ。

 

一個人として環境問題への取組みはできても、それを他者に広げることは難しいなと感じる。また、少なくとも自分にとって、可能な範囲で取組みは行っているものの、何でもかんでも取組むことは非常に困難。どうしても衝動買いなどしてしまうこともある。

そういった自身の普段の生活、考え方などを見つめなおすきっかけとして、折を見てこのような環境等に関する本を読むことは有意義だと感じる。

(読書記録)金曜日のあたしたち

第一志望校に行けなかった主人公が環境問題の活動を通じて、様々な人と接する物語。

Amazon.co.jp: 金曜日のあたしたち : 濱野 京子: 本

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高校受験に失敗し「置かれた場所で咲きなさい」という言葉が大嫌いになり、くさりまくっていた陽葵は、ある日駅前でプラカードを持って立つ高校生たちと出会う。「ストップ!温暖化」「気候時計、知ってますか? タイムリミットまであと6年!」……気候? 時計?
環境問題に熱心な高校生なんて、ちょっと変わり者なのかな、くらいに思っていたのに、その中にいたひとりの男子の笑顔がめちゃくちゃさわやかだったからというわけではないけれど、なんとなく近づいてみる。すると、それは「あたしを拒否った」高校の生徒たちで―ー。

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環境問題は経済活動にも密接に関係する事項であり、一言で完結するものではないが非常に難しい問題。

さて、この小説は青春物語という感じがあり、どちらかといえば中高生が主な読者のターゲット層な気もした。中身を読むまで、どのような小説か分からなったので、読んだ後に気づいた。

文字数も多くないので、1日もかからず読めると思う。たまには、このような本を読むのも悪くはないように感じた。

(読書記録)夜に星を放つ

第167回の直木賞受賞作。

Amazon.co.jp: 夜に星を放つ : 窪 美澄: 本

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かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。

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直木賞受賞という理由だけで読んでみたが、確かに面白いと思った。

「人の心の揺らぎが・・・」とあるが、短編であるものの確かに登場人物の心情が丁寧に描かれている印象。第三者目線では必ずしもハッピーな終わり方をしているわけではないし、よりよい選択肢もあるように思うが、得てして本人はそれに気付かないというのも人間であるように感じる。

個人的には面白いと思ったが、読みやすいタッチであり万人受けしそうな作品であるため、人によっては軽い印象を受けるかもしれない。