"ゆりかごの歌"を聴きながら

何年、何十年経ってから、何をしていたか見返すための記録

(読書記録)平凡

六つの短編から構成される小説。

Amazon.co.jp: 平凡(新潮文庫) 電子書籍: 角田光代: Kindleストア

------------------------

妻に離婚を切り出され取り乱す夫と、その心に甦る幼い日の記憶(「月が笑う」)。人気料理研究家になったかつての親友・春花が、訪れた火災現場跡で主婦の紀美子にした意外な頼みごと(「平凡」)。飼い猫探しに親身に付き添うおばさんが、庭子に語った息子とおにぎりの話(「どこかべつのところで」)。人生のわかれ道をゆき過ぎてなお、選ばなかった「もし」に心揺れる人々を見つめる六つの物語。

------------------------

この小説の感想は、巻末の佐久間文子氏が丁寧に解説していただいている内容と近いものがあった。

「もう一つの人生」というものが正に共通したテーマである。

自分自身も意識せずに決断を日々繰り返しており、その決断と行動で人生を生きているのだろう。

また、まるで人生の岐路だと思っているものも、本当にそれが岐路だったのか、あるいは、他人からすれば岐路でも何でもない、ということにもなるのかもしれない。逆も然り。

そして、本文中に「許さないことはこわい」、「許さないことより許すことのほうがはるかにかんたん」という記述があるが、確かにそういう面があるなと感じた。