"ゆりかごの歌"を聴きながら

何年、何十年経ってから、何をしていたか見返すための記録

(読書記録)人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学

実際の現代に起きている事例をもとに、行動経済学を解説した本。

人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学 | 松本 健太郎 |本 | 通販 | Amazon

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人間の50%はクズである!

「キレイごと」より「本音トーク」がウケる理由
メガ盛り」が食べたいのに「サラダ」が欲しいと嘘をつく心理
人々を新型コロナ論争に駆り立てるバイアス……

話題のデータサイエンティストが解き明かした、
大ヒット&大ブームの「悪魔の法則」

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書評などでも書かれているとおり、この本は分かりやすいし面白かった。

2020年の本であるため、事例として取り上げられているニュースは少し前のものだったりするが、逆に「こういったことあったな」と俯瞰して見れるように思った。

花咲かじいさん

第1章の冒頭で童話の「花咲かじいさん」が引用されている。

一般に欲張りで強欲な老夫婦にフォーカスが当たるが、「犯罪的な行動は除いて、成功した人をすぐにまねた、学んですぐに行動した」という観点は面白かった。

「天然水」のラベル

私は特に意識していなかったのだが、2013年頃に「天然水」がパッケージを刷新して、失敗した事例があったとのこと。

当時のラベルを見ると、なんとなくその理由は分かるような。

13年5月のリニューアルで「天然水の森」に生息する動物のイラストをデザインしたラベルに

 

この本の解説と少し異なるが、調べてみると「天然水」の失敗については色々なところで取り上げられている。この本では、「喉の渇きを潤す」ということだけではなく、「冷たく澄んだ空気の感じ」を購買者は求めていたと記載している。

「サントリー天然水」成長の原点は“首掛けPOP事件”の大失敗:日経クロストレンド (nikkei.com)

M-1の上沼恵美子氏の審査

この本では、以前に話題となった上沼恵美子氏のM-1における審査の問題について、各審査員の得点傾向なども含め整理し、これを結果バイアスや確証バイアスと絡めて記載している。実際に審査が適切に行われたか否かは私は承知していないし、その点に特に関心もないが、着目するポイントが面白かった。

医学部入試における得点調整

2018年頃に一部の大学医学部の入試において女性が男性よりも不利となるような得点調整が行われている事案が発覚し、かなり問題になった。

この本では、この点について無意識バイアスなどと絡めて解説している。性差により得点調整することは不公正であるが、そのようなことが起きる背景は何か。医師が不足している中、一つの医師の「枠」を考えたときに、女性が男性と同じように働けないから仕方ないのか。これらについて、「差別」という観点ではなく、「バイアスという悪魔」という観点で記述されている。

 

このほか、生存者バイアスと絡めて日経新聞私の履歴書」を例示に出している点、全て冷凍食品では罪悪感があるので一品だけ作ろうという感情(これは実は古い考え方ではないか)、身元の分かる犠牲者効果や感情移入ギャップとSDGsなど、面白いストーリーが随所にあった。

 

最後に、本でも触れられているが、人気作品の「カイジ」。主人公が地下労働施設でビールを飲むシーンがあり、マンガでは「犯罪的」、実写版映画では藤原竜也 氏が「悪魔的」と言っている。これは個人的にも「悪魔的」の方が好みである。